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企業型確定拠出年金の特徴

 多くの会社で、企業型確定拠出年金(DC : Defined Contribution plan)を実施していると思います。ところが、従業員から見ると、企業型確定拠出年金がどういう制度かよくわからないまま、会社からの指示で運用している場合もありそうです。私も、細かいところがよくわかっていなかったので、調べてみました。

 

1.企業型確定拠出年金とは

 企業型確定拠出年金とは、会社が掛金を拠出し、従業員が(用意された運用商品を組合わせて)運用する、企業年金制度です。

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 加入期間は60歳までで、原則、60歳まで受け取ることはできません。

 

2.掛金の限度額

 企業型確定拠出年金の(会社が拠出する)掛金には、限度額が設定されています。

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 会社によって異なりますが、実際に会社が拠出する掛金は、限度額目一杯ではなく、役職や資格に応じた額になっていることが多いようです。

 

3.マッチング拠出

 会社が規約で定めている場合は、会社が拠出する掛金に加えて、従業員も掛金を拠出する(マッチング拠出)ことができます。従業員がマッチング拠出した掛金は、全額所得控除になります。ただし、マッチングできる額については、二つの制約があります。

制約1.従業員が拠出できる額は、会社が拠出する掛金と同額まで

制約2.会社と従業員の掛金の合計は、限度額まで

 具体的な例を示します。

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例1.企業年金制度は、確定拠出年金(DC)のみ

 会社の拠出額が月額¥40,000の場合、会社と従業員の掛金の合算が限度額の¥55,000以下でなければならないため、従業員が拠出できる額は¥15,000以下です。

例2.企業年金制度は、確定拠出年金(DC)のみ

 会社の拠出額が月額¥20,000の場合、従業員が拠出できる額は会社が拠出する掛金の同額以下であるため、従業員が拠出できる額は¥20,000以下です。

例3.企業年金制度は、確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)を併用

 会社の拠出額が月額¥20,000の場合、会社と従業員の掛金の合算が限度額の¥27,500以下でなければならないため、従業員が拠出できる額は¥7,500以下です。

例4.企業年金制度は、確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)を併用

 会社の拠出額が月額¥13,000の場合、従業員が拠出できる額は会社が拠出する掛金の同額以下であるため、従業員が拠出できる額は¥13,000以下です。

 

4.運用

 従業員は、用意された運用商品(定期預金、保険、投資信託、等)を自由に組み合わせて運用します。具体的には、用意された運用商品から複数の商品を選択しておき、毎月購入します。

 会社によりますが、運用商品として、元本確保型の定期預金や保険と、元本変動型の投資信託、等が用意されています。

 以下に、運用商品の例を示します。特徴をイメージしやすくするために、利率や、信託報酬、リターン、リスク、等の数値を示していますが、これらの数値はあくまでも一例です。

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 上の例で示すように、元本確保型の運用商品の利率は、0.01%程度です。これに対して、元本変動型の運用商品は、リスク(リターンの振れ幅)は大きいのですが、投資対象を分散することで4%~5%程度のリターン(期待する収益)を見込めます。

 

 仮に、25歳から60歳まで35年間企業型確定拠出年金に加入し、会社が毎月2万円掛け金を拠出したとして、受取額がどうなるか試算してみます。

 25歳から60歳までで加入期間は35年なので、会社が拠出する掛金は累計で840万円(=2万円×12か月×35年)になります。これを、年利0.01%や、0.1%で運用した場合、リターン(期待する収益)1%や2%で運用した場合で、60歳時点で期待できる収益はどれくらいになるか、試算してみました。

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 確定拠出年金は、原則、60歳まで受け取ることはできないのですが、加入期間が長くなるにつれて期待できる受取額がどのように増えていくか、グラフにしてみました。加入期間が長くなるにつれて、期待できる受取額が急激に増えていくのがわかります。

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 ここで、非常に重要な注意点があります。元本変動型の運用商品は、リターン(期待する収益)は高いのですが、同時にリスク(リターンの振れ幅)も非常に大きいということです。このグラフに示したように、毎年確実に利益を上げていくということは絶対にありません。現在進行中のコロナショックのように-40%以上の大きな含み損を抱える年もあれば、10%以上の利益を上げる年もあります。大きく上下しながらも、20年~30年以上の長期で見れば、結果的にこの程度の収益を期待できるということです。

 

 投資において最も重要なポイントは、長期・つみたて・分散です。企業型確定拠出年金に加入すると、60歳まで会社が毎月掛金を初出するので、長期・つみたてを容易に達成できてしまいます。後は、運用商品をうまく分散して運用すれば、大きな運用益が期待できます。リターン(期待する収益)が大きい運用商品は、リスク(リターンの振れ幅)も大きいので、運用する商品を複数選んで分散して、リスク(リターンの振れ幅)を下げることが肝要です。

 

5.想定利回り

 会社によっては、想定利回りが設定されています。

 もともと、確定給付年金(DB)など掛金の拠出だけでなく運用も会社が行う制度を採用していた会社があったとします。その会社が、確定給付年金(DB)の全て、または、一部を確定拠出年金(DC)に変更する場合、確定給付年金(DB)で給付していた額と、確定拠出年金(DC)で受取る額が同額となるための利回りが、想定利回りです。

 例えば、想定利回りが2%だとすると、2%を超える運用益を得ることができれば、従業員は確定拠出年金(DC)制度に変わったことで得をしたことになります。ところが、2%を下回った場合は、確定給付年金(DB)のほうが良かったことになります。

会社によって異なりますが、想定利回りは1%~2.5%程度に設定している会社が多いようです。

 

6.配分変更

 就職してすぐに企業型確定拠出年金に加入したとすると、運用期間は30年~40年の長期になります。これだけ長いと、最初に決めた運用商品に対する掛金の配分(毎月、どの商品をどれだけ買うか)を変えたくなることもあると思います。

 企業型確定拠出年金では、いつでも、掛金の配分を変更することができます。

 例えば、当初は、リスク(リターンの振れ幅)を低く抑えようと、元本が確保される定期預金や、リスク(リターンの振れ幅)が小さい債券を中心に購入していたとします。これを、リターン(期待する収益)を高めるために株式の比率を高めたいと考えたら、インターネットなどで手続きするだけで、簡単に配分を変更することができます。

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 具体的な配分変更の手続きは会社により異なるので、会社に確認してください。

 

7.預け替え(スイッチング)

 配分変更は毎月の掛け金をどの運用商品に配分するかを変更するのですが、すでに購入した運用商品を別の商品に変更することもできます。預け替え(スイッチング)です。

 一般の投資信託で預け替えをすると、すでに購入した商品を売却する時点で課税されるため、利益が出ていた場合その利益が約80%に減ってしまいます。ところが、企業型確定拠出年金は運用益に課税されないので、そのまま別の商品に買い替えることができます。

 例えば、以下のような預け替え(スイッチング)が、インターネットなどから簡単に手続きできます。

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 注意点として、預け替え(スイッチング)の手続きをしてから実際に売却が行われるまで1週間程度、その後、新たな商品を新たに購入するまでさらに1週間程度かかりますので、その間にも資産価値は増減することを認識しておく必要があります。

 預け替え(スイッチング)を行うことで、定期預金や債券の比率を増やして安定的な運用を目指したり、株式の比率を高めて積極的な運用を目指すことができます。また、株式が値上がりして大きな含み益を得た際に定期預金に預け替え(スイッチング)して利益を確定させる、というようなこともできます。

 具体的な預け替え(スイッチング)の手続きは会社により異なるので、会社に確認してください。

 

8.運用指図者

 企業型確定拠出年金の加入期間は60歳まで60歳まで受け取ることはできないのですが、60歳になっても全額、または、一部の額を受け取らずに運用だけを続けることもできます。期限は70歳までです。

 つまり、60歳以降70歳までの間は、新たな掛金の拠出はありませんが、預け替え(スイッチング)による運用の指図を行いながら、運用を継続することができます。注意点として、加入期間中は会社が負担していた口座管理手数料を、60歳以降は従業員が負担しなければなりません。

 運用指図者として運用を続けた場合のイメージをグラフにしてみます。

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 ここで、非常に重要な注意点があります。元本変動型の運用商品は、リターン(期待する収益)は高いのですが、リスク(リターンの振れ幅)も非常に大きいということです。このグラフに示したように、毎年確実に利益を上げていくということは絶対にありません。現在進行中のコロナショックのように-40%以上の大きな含み損を抱える年もあれば、10%以上の利益を上げる年もあります。大きく上下しながらも、20年~30年以上の長期で見れば、結果的にこの程度の収益が期待できるということです。

 年金を受け取ろうとした直前で、今回のコロナショックのような事態が発生し、10年近く回復しない可能性もあります。運用を続ける場合は、最後の最後でコロナショックのような事態が発生する可能性もあるということを強く認識してください。

 

9.税制メリット

 最後に、企業型確定拠出年金(DC)の税制上のメリットをまとめます。

企業型確定拠出年金(DC)は、①運用商品の購入、②運用期間中運用益、③受け取り、において、税制上優遇されています。

① 運用商品の購入

 掛金は会社が拠出し従業員の所得とはみなされないため、所得税社会保険料の対象となりません。マッチング拠出の場合も、全額所得控除されます。

② 運用期間中の運用益

 加入者、及び、運用指図者としての運用期間中の運用益に対して課税されないため、預け替え(スイッチング)を行っても運用益が減ることはありません。

③ 受け取り

 60歳以降70歳までのどこかの時点で運用期間を終えて受け取る際には、元本と運用益を合わせた全額が課税対象になります。ですが、一括で受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」を利用することで、税を大きく軽減できます。

 

以上

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